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2019.02.01

【コラム】認知機能と知的活動について

認知症の原因疾患として全体の半数以上を占めるアルツハイマー病ですが、現段階では有効な治療法は確立されていません。そのため、認知症の予防や発症を遅らせるのに効果的であるとして、筋トレ・脳トレといった身体活動や知的活動、人との関りが増える社会活動が重要視されています。今回のコラムでは認知症と知的活動との関係性、認知機能に及ぼす効果について解説します。


(著者プロフィール)

土井 剛彦(どいたけひこ)

地域リハビリテーションに従事し、平成24年国立大学法人神戸大学大学院博士課程を修了(保健学)。平成22年より国立長寿医療研究センターに所属し、平成27年にはAlbert Einstein College of Medicineで外来研究員として研究活動を行い、現在に至る。専門領域はリハビリテーション科学、老年学で、高齢者の健康増進や介護予防に関する研究を行っている。


認知症と知的活動との関係

認知症はアルツハイマー病や脳血管性認知症をはじめとした様々な疾患が原因で発症します。多くの報告においてアルツハイマー病は認知症の半数以上を占めているため、根治治療薬または治療方法の開発が強く望まれていますが、現段階で有効な根治療法というものはまだ確立されていません。ですから、認知症の予防や発症を遅らせることを目指すためには、危険因子と保護因子に着目する必要があります(2018.10.01【コラム】認知症について. 島田裕之)。中でも、身体活動、知的活動、社会活動を日常生活の中で積極的に行うことが重要視されています。それぞれの活動は、多くの疫学研究から認知症に対して保護因子であると認識されています。知的活動や余暇活動の要素の入った活動に着目した研究では、読書やゲームをすること、さらには楽器の演奏やダンスをしていることなどが認知症に対する保護因子であると報告されています1(図1)。


図1 

知的活動と認知症のリスク

(Verghese J, Lipton RB, Katz MJ, et al. Leisure activities and the risk of dementia in the elderly. N Engl J Med. 2003;348(25):2508-2516.より作図)

各活動における実施状況として、よくする者はほとんどしない者に比べ認知症の発症リスクが低いことが示された。


Mild cognitive impairment (MCI: 軽度認知障害)とは?

認知症の予防や発症を遅らせることを目指すためには、できるだけ早い段階から予防を目指した活動を行うことが必要とされており、軽度認知障害(mild cognitive impairment: MCI)の状態であれば、まだ認知機能の改善が見込める状態であることが確認されつつあります。MCIは、認知症ではないが通常の加齢よりも認知機能低下が進んだ状態であるとされ、認知機能低下を判定する定義としては、年齢・性別・教育歴などを加味して算出された標準値よりある程度の認知機能低下(1.5標準偏差以上の低下とされる場合が多い)がみられる場合とするという報告が多いようです2。MCIは加齢よりも大きな認知機能低下を有していることから認知症への移行リスクが大きい反面、ある一定の割合で正常な認知機能に戻る場合があるため、認知症予防を目指した取り組みにおいて非常に重要であると認識されています。実際、当研究部での4年間の縦断調査によると、MCIは認知機能が正常の者に比べ認知症になるリスクが高い反面、MCIから正常へ移行することもみられ、もともと軽度のMCI(単一領域の低下)であれば約半数近くの割合で正常域へ移行することが示されました3。ですから、このMCIの時期において積極的に取り組んでいただくことが大事になると考えられ、MCIに対してどのような方法を用いれば認知機能低下を抑制できるのかということに注目が集まっています。


ダンスや楽器の演奏が認知機能に及ぼす効果

当研究部においては、認知機能低下を抑制できる方法として運動に関する研究を行ってきましたが、運動以外には前述の知的活動を用いたプログラムの効果を検討しました。検討の方法としては、MCIの方201名を対象にランダム化比較試験を実施して、音楽を用いたプログラムとダンスを用いたプログラムの認知機能に及ぼす効果を検証しました4。それぞれ、プロのインストラクターによる指導のもと、週に1回の頻度で計40回のプログラムを実施しました。音楽を用いたプログラムは、楽器の演奏を主体とし、コンガという打楽器を用いて行いました(図2)。ダンスを用いたプログラムは、社交ダンスをベースに高齢者でも実施できるように考慮された内容で構成されました(図3)。プログラムへの参加率はいずれのプログラムも85%以上あり、楽しんで継続しやすいプログラムであったと思われます。検証の結果としては、音楽を用いたプログラムは全般的な認知機能に良好な効果をもたらし、ダンスを用いたプログラムは全般的な認知機能や記憶に対して良好な効果がみられました。楽器の演奏は、譜面を理解することや覚えることが求められ、楽器の演奏する方法や演奏する順番を覚えたうえで実行することが必要です。一方で、ダンスは様々なリズムに応じてステップの仕方が異なり、足の運びや体の動かし方を覚えたうえで実行します。このように、音楽を用いたプログラムとダンスを用いたプログラムはどちらも記憶やdual-taskでの実行など、認知的要求を伴う活動であると考えられるため、認知機能に保護的な効果があったのではないかと考えられます。これらの楽器演奏やダンスを用いたプログラムが認知機能に及ぼす効果は、運動と同様に効果量が比較的大きいものではありませんので、他のコラムもご参考にしていただき、認知症のリスクに対して保護的に作用できる活動や取り組みを一つでも多く行っていただくことが重要です。


図2 

楽器演奏を用いたプログラムの様子


図3

ダンスを用いたプログラムの様子


<出典>

1. Verghese J, Lipton RB, Katz MJ, et al. Leisure activities and the risk of dementia in the elderly. N Engl J Med. 2003;348(25):2508-2516.

2. Petersen RC. Clinical practice. Mild cognitive impairment. N Engl J Med. 2011;364(23):2227-2234.

3. Shimada H, Makizako H, Doi T, Lee S, Lee S. Conversion and Reversion Rates in Japanese Older People With Mild Cognitive Impairment. J Am Med Dir Assoc. 2017;18(9):808 e801-808 e806.

4. Doi T, Verghese J, Makizako H, et al. Effects of Cognitive Leisure Activity on Cognition in Mild Cognitive Impairment: Results of a Randomized Controlled Trial. J Am Med Dir Assoc. 2017;18(8):686-691.

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