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医師から診断結果を聞いて心配になる女性
2023.03.15

高血圧になると自覚症状は出る?原因や対策、リスクなどを紹介

「病院で高血圧と言われたけれど、特に症状は出てないし、放っておいてもいいだろうか」と思われる方は多いのではないでしょうか。

しかし、高血圧を放置すると、さまざまな病気を招くリスクが高まります。

この記事では、高血圧とはどのような状態なのかをはじめ、高血圧の症状や高血圧が招く重篤な病気、対策などについて解説します。高血圧と診断されたご本人はもちろん、ご家族で高血圧が気になっている方もぜひご覧ください。


目次
・血圧や高血圧とは?基本知識を分かりやすく解説
・高血圧の自覚症状には何がある?
・高血圧が続くと生じる合併症
・高血圧の対策8点
・まとめ

執筆者画像
【監修】北里研究所病院 予防医学センター人間ドック科 部長 小杉理恵 先生
医学博士。日本内科学会総合内科専門医。日本循環器学会認定循環器専門医。日医認定産業医。人間ドック健診専門医・指導医。北里大学医学部入学。北里大学病院にて初期研修終了後、関連病院にて心不全や心筋梗塞といった循環器内科領域の研鑽を積み、北里大学医療系大学院にて博士号取得。北里大学病院循環器内科助教、北里研究所病院循環器内科医長、北里大学東病院健康科学センターを経て、北里研究所病院予防医学センター人間ドック科部長として活躍中。

血圧や高血圧とは?基本知識を分かりやすく解説

血圧とは心臓から送り出された血流が血管の内壁を押す力(圧力)のことです。血圧には、収縮期血圧と拡張期血圧があります。よく、「血圧の上が110で、下が80」という表現をしますが、上というのは収縮期血圧のことで、下は拡張期血圧を指します。正常な血圧の範囲は、収縮期(最高)血圧が 120mmHG未満、かつ拡張期(最低)血圧が 80mmHG未満です。また、下記の基準値以上の数値での場合は「高血圧」と判断されます。

日本人の高血圧患者数は約4,300万人と推計され、日本人の 3人に1人(成人では2人に1 人)が高血圧だといわれています。なお、日本人の平均血圧値(20歳以上)は以下のとおりです。


出典:「令和元年国民健康・栄養調査」第2部 身体状況調査の結果

高血圧の自覚症状には何がある?


高血圧は、一般的に自覚症状がありません。 血圧を測定しないとわからないため、健康診断を受診して初めて高血圧症であると判明することも多いのです。それが、高血圧が“サイレントキラー”と言われる所以です。毎日10万回心臓の拍動があり、その際に毎回その大きな圧力が全身の動脈にかかる、拍動の度に動脈に細かい傷をつけ、それが積み重なって大きな合併症を招きます。

高血圧が続くと生じる合併症


脳の神経に痛みがある時のイメージ図

高血圧症を治療せず、長い期間高血圧の状態が続くと、体にさまざまな影響が表れます。それらのほどんどは動脈硬化を原因とするものです。動脈は全身に栄養や酸素を送るため、動脈硬化が起きると全身に影響がおよびます。

脳血管障害(脳卒中)

高血圧状態が続くと動脈硬化が進み、脳卒中を引き起こすリスクが高まります。以下に、脳卒中の代表的なものを3つ紹介します。激しい頭痛を伴う吐き気、嘔吐や意識障害などの症状が表れたら、脳卒中を発症している恐れがあります。
1.脳梗塞……硬くなった血管に血栓が詰まる
2.脳出血……脳の血管が破れる
3.くも膜下出血……脳動脈瘤が破裂する

脳梗塞を起こすと脳細胞に血流が行き渡らなくなるため、短時間で脳細胞の働きが悪くなり、半身麻痺などの症状が出ます。病院に行かずにそのまま数時間放置すると、脳細胞が死滅してしまい、命に関わります。
脳出血の最大の要因は高血圧です。異常な高血圧が続くと、脳の血管が破れて脳出血を起こす恐れがあります。くも膜下出血は、脳動脈瘤が破れることで突発的に激しい頭痛や意識障害が起こります。脳卒中の中でも死亡率が非常に高い、重篤な病気です。


慢性腎不全

腎臓は主に血液をろ過して尿を作り出す臓器です。腎臓の中には、「糸球体」と呼ばれる毛細血管のかたまりが大量にあり、ここで血液をろ過して尿を作り出しますが、高血圧が続いて腎臓の血管が傷つくと、ろ過機能が破綻して慢性腎不全に陥ります。腎不全もかなりの重症になるまで症状は現れないため、注意が必要です。


高血圧になる主な原因

続いては、高血圧の原因について解説します。高血圧には、複合的な要因で生じてくる「本態性高血圧」と、ホルモン分泌異常が原因で引き起こされた「二次性高血圧」の2種類があり、高血圧症の90%以上は本態性高血圧といわれています。
それでは、高血圧を招く要因の一例を見ていきましょう。


塩分の取り過ぎ

食塩の取り過ぎは、血圧に影響を及ぼします。 体は、血中の水分と塩分を一定の濃度に保とうとします。そのため、塩分を取り過ぎた状態になると、塩分濃度を下げるために体内に水分をため込み、血液量が増加するのです。血液量が多くなると血管壁にかかる力が強くなり、血圧が高くなります。日本高血圧学会の減塩目標値は6g/日未満ですが、

「令和元年国民健康・栄養調査」(※)によると、日本人の食塩摂取量は 平均で9.7gと大幅にオーバーしているため、注意が必要です。味覚は年齢とともに鈍くなるため、知らず知らずのうちに塩分過多になる傾向があります。塩味の代わりに、出汁や酸味などの味付けの工夫も必要です。

※出典:「令和元年国民健康・栄養調査」第1部 栄養素等摂取状況調査の結果


加齢

加齢によって、血管の弾力性は低下し、動脈硬化を招きます。血管が硬くなると、血流が悪くなり、特に血圧の「上」と呼ばれている収縮期血圧が高くなる傾向にあります。動脈硬化のほか、加齢による自律神経の働きの低下も、高血圧の要因のひとつです。高血圧患者数は高齢になるごとに増加しており、加齢による影響が大きいことが分かります。

高血圧症有病者の割合(%)

出典:「令和元年国民健康・栄養調査」第2部 身体状況調査の結果

ストレス

ストレスとは「外部からの刺激によって生じた緊張状態」を指し、大きく分けて以下3つの要因に分けられます。

・環境的要因……天候、騒音など
・身体的要因……病気、睡眠不足など
・社会的要因……人間関係や仕事の不調など

ストレスがかかると、血管が収縮するため血圧が上がりやすくなります。完璧主義の人、せっかちな性格の人などは、よりストレスを感じやすい傾向にあります。

肥満

体重が増えると血圧は上昇します。近年、脂肪細胞から血圧を上昇する様々な生理活性物質が分泌されることがわかりました。減量で血圧が低下し、降圧剤が不要になるケースもあります。

喫煙

タバコを吸うと、末梢血管が収縮するために一時的に血圧が上がります。さらに、長期的な喫煙習慣は動脈硬化を促進させるため、血圧を上げると考えられています。喫煙期間が長いほど、また喫煙本数が多いほど、高血圧になるリスクは高くなります。


二次性高血圧

二次性高血圧は、主に腎臓や内分泌機能の病気によって起こる高血圧症です。 まだ若いにもかかわらず高血圧になったり、急速に高血圧が進行したり、電解質異常を伴う高血圧だったりする場合は、二次性高血圧の可能性があります。


高血圧の対策8点

高血圧は生活習慣の見直しで改善させることが可能です。最後に、具体的な高血圧の対策を解説します。

減塩を意識して塩分は 1日6g未満に抑える

本態性高血圧患者は、食塩摂取量を1日1g減らすと収縮期血圧が平均1mmHg強、下がると期待されています。減塩のために意識したいことを紹介しましょう。

・麺類の汁は残す

・汁物は一日一回にし、具を多めに入れる
・味付けは出汁や酢や香辛料などを活用する
・減塩調味料を活用する
・調味料は「かける」より「つける」ようにする
・だしの旨味を楽しむ
・香辛料や柑橘類を活用する

カリウムや不飽和脂肪酸を積極的に取る

カリウムは必須ミネラルのひとつで、野菜や果物などの生鮮食品に多く含まれています。体内の余分なナトリウム(塩)を排出させる働きがあるため、カリウムを多く含む食品を摂取すると、血圧を下げる効果が期待できます。ただし、腎臓疾患のある人は、カリウムを取り過ぎると心停止を招く恐れがあるため、必ずかかりつけ医に相談してください。また、不飽和脂肪酸は魚や植物油などに多く含まれ、血圧を下げる働きがあります。対して肉類や卵に多く含まれるコレステロールや飽和脂肪酸は、血圧を上げる作用がありるため、食べすぎは禁物です。

アルコールを控える(節酒)

アルコールを制限すると、1~2週間程度で血圧低下が見られます。毎日の酒量を減らすだけではなく、まったくアルコールを取らない休肝日も必要です。最低でも週2日は休肝日を設けるようにしましょう。
高血圧管理における適度な飲酒量(1日あたり) ※男性の場合


女性や体重の軽い人は、この半分量を目安にしてください。


肥満の改善

脂肪細胞からは、血圧を上昇させる様々な生理活性物質が分泌されるため、減量して脂肪細胞が減ると血圧が低下します。降圧剤で治療が必要だった場合でも、減量により降圧剤が不要なほど血圧が安定していくケースも確認されています。なお、運動は血管の弾力性を高めて降圧効果が得られる上に、汗をかけば体内の余分な塩分を排泄できます。
日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン 2019」では、毎日30分以上または週180分以上運動が推奨されています。ウォーキングやジョギング、ステップ運動などの有酸素運動がおすすめです。まとめて運動の時間をとれない場合は移動の際に歩きや階段を利用するなど工夫しましょう。


禁煙

喫煙後30分ほどで、血圧は10~20mmHG上昇するといわれています。 高血圧と診断されたら、禁煙を心掛けるのが大切です。加熱式タバコも血管に有害です。


睡眠をしっかり取る

睡眠不足になると、交感神経が活発化して血圧が上がります。アメリカの研究では、睡眠時間が 5時間のグループは 6時間のグループと比べて高血圧になる割合が 37%高かったという研究結果が出ています。しかし、一方で睡眠のとり過ぎも高血圧を招くといわれているため、寝不足も寝過ぎにも注意が必要です。1日に7~8時間ほどの良質な睡眠を確保するようにしましょう。


ぬるま湯でゆっくり入浴する

入浴によって体が温まると血管が拡張する上に、副交感神経が優位になるため血圧を下げる効果があります。また、入浴後に深部体温が低下してくると入眠がスムーズになり、質の高い睡眠を得られやすくなることも血圧低下につながります。ただし、熱いお湯は交感神経を活性化させ、急激な温度変化によるヒートショックを引き起こすなど体に負担をかけるため気を付けましょう。おすすめは、39~41度程度の中温浴です。


降圧剤を適切に服用する

降圧剤は、一般的に生活習慣を改善しても血圧が下がらない場合に処方される薬で、カルシウム拮抗薬や ACE阻害薬などが代表的です。血圧が高くても、自覚症状がないと自分の判断で服用をやめてしまう人もいます。しかし、重篤な合併症を引き起こさないためにも、勝手に服用をやめたりせずに医師の指示通りに服用してください。


まとめ

高血圧は、国民病といわれるほど多くの患者がいる病気です。 高血圧は、たとえ症状がなくても、将来的に重篤な合併症が出る恐れがある病気です。治療を始めてもすぐには効果が表れないことも多いので、長期間かけて、高血圧の対策や治療を行うことが大切です。

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