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2021.04.14

【東京大学】ウェブ上の簡単なテストで、アルツハイマー病の前駆状態に該当する可能性を予測するアルゴリズムを開発

認知症の原因の約7割を占めるアルツハイマー病の方は、現在の日本国内だけでも400万人以上いるともいわれ、根本的な治療法の開発が急務です。アルツハイマー病が起きるメカニズムには未解明な点が残されていますが、脳内にアミロイドβという異常たんぱく質が貯まっていくことが最初のきっかけとして重要視されており、最近の研究では、物忘れなどの認知症症状が始まる10~20年以上前からアミロイドβが蓄積してきていることが明らかになってきました。


無症状ながらアミロイドβが蓄積している、いわば発症前の前駆状態を「プレクリニカル期」と呼び、近年ではこの時期に治療を開始することで、根本的な治療が可能になるのではないかと考えられるようになってきました。2021年現在では、プレクリニカル期の方を対象として、アルツハイマー病の根本治療薬の開発を目指したいくつかの臨床試験が世界的に始められています。


一般に、60~70代以上の方の約4~5人に1人程度はこのプレクリニカル期に該当すると見積もられています。しかし、プレクリニカル期の方は基本的にほとんど認知機能の低下症状がなく、臨床試験の対象となる方を見つけ出すことが大きな課題となっています。脳内のアミロイドβの蓄積を判定するためには脳PET等の専門的な検査を行う必要がありますが、検査可能な施設が限られており、費用も高額なので簡単に行うことはできません。


また認知機能の状態を正確に判断するための心理検査も必要で、こちらも手軽にできるものではありません。ところが、プレクリニカル期に該当するのは約5人に1人程度ですから、手がかりなく闇雲に検査をしてしまえば、せっかくPET検査や心理検査を行っても無駄になってしまう、という懸念もありました。


そこで東京大学大学院医学系研究科・佐藤謙一郎医師、岩坪威教授らのグループは、インターネット上(https://www.j-trc.org)で年齢・性別などのほかに簡単な認知機能検査などを行うことによってプレクリニカル期に該当する方を予測できるアルゴリズムを作成し、活用を開始しました(図1)。簡単な認知機能検査やいくつかの情報を組み合わせてスクリーニングとして活用できるため、約5人にPET検査を行い、うち1人のプレクリニカル期の方を初めて見いだせるところを、より少ないPET検査で済むという資源効率的・費用経済的な効果も得られると期待されます。また、ウェブ上で完結してスクリーニング評価が行えるため、これまで対面での検査・聞き取りが中心であった従来型の臨床研究よりも多くの方が気軽に参加でき、自分の認知機能に関心をもって頂ける効果も期待できます。


■図1 インターネット上における簡単な認知機能検査 

吹き出しにある項目を加え、他に簡単な認知機能検査をインターネット上で実施。

CFIは「認知機能インデックス」の略。1年前と比較した自覚的な認知機能の変化について回答する。



この成果は、2019年秋から開始している「J-TRCウェブスタディ(https://www.j-trc.org)」(※1)に登録している約3,000人のデータに適用し、その中でプレクリニカル期に該当する可能性が高いと推測された方から順に、2020年秋からJ-TRCウェブスタディにつづく段階である「J-TRCオンサイト研究」(※2)へ参加を案内する上での参考指標として活用が開始されています(図2)。


■図2 開発した予測アルゴリズムのJ-TRCオンサイト研究への参加指標としての活用 


この予測アルゴリズムは、プレクリニカル期の方を対象に、抗アミロイドβ抗体医薬を投与する臨床試験「A4研究」(※3)のためのスクリーニングの過程で得られた公開データを用いて構築しています。


J-TRCウェブスタディ参加者のうち、一部の方の過去のPET検査結果と、本アルゴリズムによるアミロイド蓄積の予測結果を照合すると、AUC(※4)0.81程度と、ある程度良好なアルゴリズムの予測能が得られました。このアルゴリズムにおいては、年齢が高い、自覚症状(CFIスコア)が高い、あるいは認知症の家族歴がある方のほうがアミロイド蓄積の程度がより強い傾向にありました。


一方で、性別や就学年数はあまり影響しないという傾向がありました。訓練データは大部分が米国人のデータで構成されているなどの限界点もありますが、本アルゴリズムを日本人に対して用いることも妥当性があると考えられます。


■図3 開発した予測アルゴリズムの精度評価 


本アルゴリズムによる予測が最終的にどの程度正しいものであるか、またこのアルゴリズムを利用することでプレクリニカル期アルツハイマー病の方の正しい診断が可能となるかは未だ不明であり、今後の研究から解答が得られるものと考えられます。本アルゴリズムの限界点も踏まえながら精度を検証し、性能を継続的に向上させることにより、将来的にはプレクリニカル期に対する汎用性のある予測アルゴリズムが構築できるものと期待されます。


※1 J-TRCウェブスタディ

インターネットを介して認知機能やアルツハイマー病のリスク因子を調べ、より詳細な研究や治験に導くための臨床研究登録システム。2019年11月より開始され、現在までに6,100名の登録を得ている。50~85歳までの方々がインターネットを介してホームページ(https://www.j-trc.org)から同意の取得、基本情報登録の後に、15分程度で実施可能な2種類の認知機能(記憶・思考力)テスト(認知機能指標:CFIとCogstate(コグステート))を受検、以降、3ヶ月ごとにインターネット上で検査を反復し、経時的なスコアの変化等に基づき追跡検査を行い、セルフモニタリングとしても活用いただく。将来的なAD発症のリスク上昇が疑われる方については、ご希望に応じて、医療研究機関に来院して行う第2段階の研究(J-TRCオンサイト研究)への参加を案内する。


※2 J-TRCオンサイト研究 

脳にアミロイドβ蓄積が始まっているが認知機能が正常範囲にある「プレクリニカル期」の方を、アミロイドPET、血液検査、認知機能検査などで同定し、予防治験に導くための「治験即応コホート」を構築する研究。J-TRCウェブスタディから招聘された方を中心に、東京大学、国立精神・神経医療研究センター、国立長寿医療研究センター、都健康長寿医療センター、東北大、大阪大、神戸大などの主要医療機関で実施し、現在までに190名の登録と研究ならびに治験への紹介が進んでいる。


※3 A4研究 

プレクリニカル期のADの人を対象として、2014年に北米で開始されたADの薬剤予防治験。ADの病因タンパク質と考えられるアミロイドβに対する抗体医薬「ソラネズマブ」を、PETによるアミロイド陽性、認知機能が正常な参加者に4.5年間にわたり投与し、鋭敏な認知機能指標「Preclinical Alzheimer Cognitive Composite」(4種の認知機能検査の総合スコア)の改善により効果を判定する。日本では東京大学の当J-TRC研究の主要メンバーにより遂行中であり、2022年に効果判定が予定される。さらにA4研究と同時期を対象とするA45研究、さらに先行する段階を対象とするA3研究が米国や日本で開始されている。


※4 AUC 

area under the curveの略。ある指標の判別能をあらわす統計学的数値であり、0から1までの値をとる。判別能がランダムであるときAUC=0.5となり、その値が1に近いほど判別能が高いことを示す。



■詳細は以下の外部リンクをご覧ください。

https://www.amed.go.jp/news/release_20210325-02.html

■J-TRCに参加ご希望の方は、こちらのホームページをご覧ください。 

https://www.j-trc.org


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