近年の日本では、加齢に伴い認知機能が徐々に低下し、認知症に至る高齢者が増加しています。これまで認知機能の低下は、神経細胞(※1)の減少もしくは機能不全が原因であると考えられていました。このため、認知症の治療薬は神経細胞をターゲットとして開発されてきましたが、認知機能の制御に関わるメカニズムについては十分に理解されていませんでした。
※1 神経細胞
情報と処理その伝達に特化した細胞であり、神経系を構成する基本単位。一般的には、他の神経細胞からの入力を受ける樹状突起、情報の出力を担う軸索、核を有する細胞体からなる。通常、発達後の脳において新たな神経細胞が産生されることはないが、海馬など一部の脳領域では生涯に渡って神経細胞が作られており、新生神経細胞は学習や記憶に重要な役割を担っている。