{{ header }}
{{ body }}
スキップ
2022.08.22

【九州大学】認知症の新たな治療薬開発に期待「加齢による認知機能低下を改善するグリア細胞由来分子を発見」

近年の日本では、加齢に伴い認知機能が徐々に低下し、認知症に至る高齢者が増加しています。これまで認知機能の低下は、神経細胞(※1)の減少もしくは機能不全が原因であると考えられていました。このため、認知症の治療薬は神経細胞をターゲットとして開発されてきましたが、認知機能の制御に関わるメカニズムについては十分に理解されていませんでした。


※1 神経細胞

情報と処理その伝達に特化した細胞であり、神経系を構成する基本単位。一般的には、他の神経細胞からの入力を受ける樹状突起、情報の出力を担う軸索、核を有する細胞体からなる。通常、発達後の脳において新たな神経細胞が産生されることはないが、海馬など一部の脳領域では生涯に渡って神経細胞が作られており、新生神経細胞は学習や記憶に重要な役割を担っている。



これまでの研究で、九州大学と神戸薬科大学の研究グループは、マウス海馬の神経幹細胞の微小環境を構成しているニッチ(※2)の解析を行い、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(以下CSPG)が神経新生の促進と認知機能の制御に重要であることを明らかにしました。一方で近年、CSPGの合成と分解は、グリア細胞(※3)由来分子による制御を受けていることが分かってきています。そこで研究グループは、神経細胞のグルタミン酸受容体(※4)の阻害剤として開発され、抗認知症薬として認知症の治療に処方されているメマンチンを用いて、海馬のCSPGとグリア細胞由来の分子に対する作用を解析しました。


※2 ニッチ
神経細胞とグリア細胞(アストロサイト)に分化する能力を有する神経幹細胞の未分化状態と分裂能を維持している微小環境の総称。
※3 グリア細胞
従来は、神経細胞の代謝や構造、イオン環境の保持など、主に局所における神経細胞のサポートを担う細胞であると考えられてきた。しかし近年、神経細胞による神経伝達の制御や、記憶の形成や保持に深く関わっていることが明らかになっている。
※4 グルタミン酸受容体
神経細胞間の情報伝達の場であるシナプスに多く発現しており、主に興奮性の神経伝達に関わる受容体のこと。学習や記憶に重要な役割を果たしていると考えられている。


■研究の内容と成果

最初に、若齢マウスと加齢マウスを用いて、海馬におけるCSPGの発現量と、神経幹細胞や新生神経細胞の分布密度を比べたところ、いずれも加齢マウスで減少していることが分かりました。

次に、メマンチンを加齢マウスに投与したところ、海馬のCSPGの発現量と新生神経細胞の分布密度が回復するという結果が出ました。また、メマンチンを投与したマウスの認知機能を評価したところ、海馬依存性の作業記憶(※5)とエピソード記憶(※6)の両方が改善していることが分かりました。

そこで研究チームは、加齢マウスの海馬におけるニッチ関連分子についての遺伝子発現解析を実施。その結果、メマンチンの投与によって、CSPGの主要な合成酵素であるCSGalNAcT1やC6STの発現が増強されることが分かりました。一方で投与後、CSPGの分解酵素であるMMP9の発現は低下していました。


さらに加齢マウスの海馬のCSPGを選択的に分解する実験に取り組みました。その結果、海馬のCSPGが消失した加齢マウスでは、メマンチンを投与しても新生神経細胞の増加が起こらないことや、作業記憶やエピソード記憶の改善が起こらないことが明らかになりました。これまでの研究により、ニッチ関連分子であるCSGalNAcT1やMMP9はグリア細胞によって産生されることが分かっており、今回の研究結果はグリア細胞由来分子がCSPGの発現量の増加を介して神経細胞の産生を促し、加齢による認知機能低下を改善する鍵を握っていることを示唆しています。


※5 作業記憶

作業の実行に必要な情報についての短期的な記憶

※6 エピソード記憶

経験に関する長期的な記憶


【研究成果の概要図】

神経幹細胞のニッチであるCSPGの合成酵素や分解酵素はグリア細胞由来の分子。今回の研究で、それらが神経細胞の産生を促進し、加齢による認知機能低下を改善する鍵を握っていることが分かりました。

■今後の展開

今回の研究によって、加齢に伴い低下する認知機能を改善するためには、CSPGの発現を制御する分子による神経新生の促進が重要であることが分かりました。今後、グリア細胞由来分子による認知機能改善のメカニズムのさらなる解明と、グリア細胞をターゲットとする新たな認知症治療薬への展開が期待されています。



■詳細は以下の外部リンクをご覧ください。

https://www.kyushu-u.ac.jp/f/49068/22_0801_01.pdf


楽しく、あたまの元気度チェック(認知機能チェック)をしましょう

あたまの元気度チェックへ

メール会員のおもな特典

メール会員には、「あたまの元気度チェックの結果記録」に加え、以下のような特典があります。

身長や体重・運動習慣等を入力するだけで、将来の認知機能低下リスクをスコア化できます。

認知症や介護に関する最新のニュースやお役立ち情報を月2回程度お知らせします。

関連記事

  • 認知症知識・最新情報
  • 【九州大学】認知症の新たな治療薬開発に期待「加齢による認知機能低下を改善するグリア細胞由来分子を発見」