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2022.06.06

【東邦大学】腹腔細胞が老化による認知機能低下を改善することを発見

日本における認知症高齢者の数は年々増加しており、まもなく65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症あるいは軽度認知機能障害になると言われています。しかし、残りの4人の認知機能が老化しないわけではありません。50歳ないし60歳前後から、とくに疾病などの理由がなくても、新しいことが以前のように覚えられなくなった……など、認知機能の衰えを自覚し始める人が多く見られます。


このように、老化は誰もが直視せざるを得ない問題であるにも関わらず、その正確なメカニズムは解明されていません。認知症など、病的な状態がなぜ引き起こされるのかを明らかにする研究が広く行われる一方で、自然な老化そのものに対する研究は少ないのです。


このような背景のもと、東邦大学医学部薬理学講座、京都大学、立命館大学の研究グループは、高齢マウスを使って腹腔細胞(※1)の老化改善が認知機能老化の改善につながることを見出しました。そして、ヒトの60歳ごろに相当するマウスの認知機能を、20~30歳ごろと同等に改善することに成功しました。


※1 腹腔細胞

内臓の周りに広がる腹部内腔を腹腔と呼ぶ。腹腔には、マクロファージやB細胞などの多くの常在性免疫細胞が存在しており、それらをまとめて腹腔細胞と呼ぶ。自然免疫反応に関与すると考えられている。


【研究内容】

脳由来神経栄養因子(以下、BDNF)は、そのほとんどが脳で作られ、脳の機能維持や神経細胞の生存に重要な働きを持つだけでなく、血液脳関門を通過して心臓などの末梢組織の機能にも影響しています。脳でのBDNFの発現は加齢とともに低下し、老化との関連性が考えられています。


研究グループは、腹腔細胞の老化を改善すると、その刺激が迷走神経(※2)を通じて脳に伝達され、BDNF発現を上昇させて老化した認知機能を改善することを見出し、認知機能老化を抑制する新たな腹腔細胞と脳との関係性を明らかにしました。


免疫細胞の遊走を制御するケモカイン(※3)の一つであるCX3CL1は、運動によって発現が上昇することが知られていましたが、その役割は不明でした。研究グループは、CX3CL1を高齢マウスの腹腔に投与すると、老化によって変化した腹腔細胞の性質が部分的に回復すると同時に、老化した認知機能が改善することを明らかにしました(図1)。


※2 迷走神経

脳と内臓などの末梢器官をつなぐ自律神経系で、脳からの情報を末梢器官に伝えるだけでなく、末梢器官の情報を脳に伝える役割も担っている。

※3 ケモカイン

免疫細胞などから分泌されるペプチドのうち、白血球を遊走させる活性を持つものをケモカインと呼ぶ。CX3CL1はその一つで、白血球を遊走させる以外に、インスリン分泌制御や中枢神経細胞保護などにも関与している。


【図1】CX3CL1による認知機能老化の回復

高齢マウスの認知機能は若齢マウスに比べて低下していたが、CX3CL1の投与によって若齢マウスとほぼ同程度に回復した。

このCX3CL1投与によって老化が改善した腹腔細胞を別の高齢マウスに移植すると、移植された高齢マウスの認知機能が回復することも判明しました。さらに、腹腔へのCX3CL1投与は脳のBDNF発現を亢進し、その亢進は迷走神経を切断すると消失しました。この結果は、腹腔細胞の老化が迷走神経を介して、脳の老化に影響している可能性を示しています(図2)。


【図2】今回の成果の模式図

腹腔細胞の老化が改善すると、その刺激が迷走神経を介して脳に伝わり、認知機能の老化が改善する。


BDNFの発現低下は、うつ症状、双極性障害、認知症などの多くの精神疾患と相関するだけでなく、虚血性心疾患、動脈硬化などの循環器系の疾患との関係も指摘されています。これらの疾患は、加齢とともに発症リスクが増加する加齢関連疾患であり、加齢による発症リスクの増大は、脳でのBDNF発現が加齢とともに減少することと合致しています。


脳のBDNF発現を上昇させる方法として、運動やポリフェノールの摂取、腸内細菌叢の調節、睡眠、ストレスの低下など、日常の生活習慣、食習慣の改善が期待されていますが、未だ老化した脳機能を改善する方法は確立されていません。今回の研究は、腹腔細胞が脳の老化により低下したBDNF産生を回復して、脳機能を改善するための有効なターゲットとなることを示しています。


今後、さらに検討を進めることで、生理的な老化の進行を制御するメカニズムを解明し、老化を治療することを可能にして、高齢者のQOLの向上や加齢関連疾患の予防に貢献することが期待されています。


■詳細は以下の外部リンクをご覧ください。

https://www.toho-u.ac.jp/press/2022_index/20220520-1208.html


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