2023年6月、認知症基本法案が成立し、認知症に対する社会の変化が注目されています。今後は、認知症の人が尊厳を保ち、希望を持って暮らし続けられる共生社会の実現を目指し、取り組みが行われていくでしょう。
そんな共生社会の実現のヒントにもなる映画、『オレンジ・ランプ』が6月30日より公開されます。
若年性アルツハイマーご本人の思いを知る
本作は、実在する認知症ご本人の方々への取材をもとに制作された映画になります。主人公のモデルとなるのは、丹野智文さん。丹野さんは、自動車販売会社でトップセールスマンとして活躍していた2013年、39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断を受けました。そこから、仕事や家族とのコミュニケーションなど日常生活へさまざまな影響が発生し、そのたびに悩み・行動し認知症と向き合ってきたようです。
以前、本メディアで受けていただいたインタビューでは、当事者としての思いをこのように語っていただきました。
「認知症になると、周りの人は少しでも症状の進行を遅らせたいと思う。でも周囲の優しさが、本人を陥れているところもあるんです。当事者同士で話していると、『財布を持つのを禁止された』『一人で出かけるのを禁止された』という人がとても多いんですよ。なぜかというと、周りが失敗しないように先回りをするから。それは優しさなんだけど、結果的に当事者の自立の機会を奪っている。何もできない人にしているのは、周りの人たちでもあるのではないかと思います。」
参考記事:~若年性認知症当事者 丹野智文さんインタビュー~ 「自分で決めて、自分で動く」ことが当事者や家族の笑顔に
ご本人だからこそ抱く、さまざまな思いがあります。周囲の人は、その思いをくみ取り、応えようと思っても、お互いにわずかなズレが生じてしまう。ご本人の真の思いを知ることが、共生社会実現のきっかけになっていくのです。丹野さんのさまざまな経験や思いが作品にも反映されていることでしょう。
その他にも、認知症の本人が主体となり活動を行なっている「日本認知症本人ワーキンググループ」の代表理事を務める藤田和子さんなど、様々な認知症ご本人やご家族の方々への取材を通して、オリジナルストーリーが完成しました。
■ストーリー
妻・真央や二人の娘と暮らす39歳の只野晃一は、充実した日々を送るカーディーラーのトップ営業マン。そんな彼に、顧客の名前を忘れるなどの異変が訪れる。下された診断は、「若年性アルツハイマー型認知症」。驚き、戸惑い、不安に押しつぶされていく晃一は、とうとう退社も決意する。心配のあまり何でもしてあげようとする真央。しかし、ある出会いがきっかけで二人の意識が変わる。「人生を諦めなくていい」と気づいた彼ら夫婦を取り巻く世界が変わっていく・・・。
■作品概要
・タイトル:『オレンジ・ランプ』
・劇場公開日:2023年6月30日
・出演:貫地谷しほり 和田正人ほか
・監督:三原光尋
・企画・原作・プロデュース:山国秀幸
・企画協力:丹野智文
・配給:ギャガ
©2022「オレンジ・ランプ」製作委員会