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女性の高齢者と数値グラフのイメージ図
2018.10.02

認知症の基礎データに登場する久山町研究って?

久山町研究は、大規模な生活習慣病の疫学調査で、福岡県の久山町で長年行われている研究です。その中の認知症研究の成果は、認知症に関する基礎データとして様々な場面で登場します。認知症関連でたびたび目にする久山町研究について説明しましょう。


どんな研究?

久山町研究は、福岡県糟屋郡久山町の住民を対象に行われている、生活習慣病の疫学調査*です。1961年に脳卒中の調査から始まり、認知症の研究は1985年に開始されました。疫学調査では、認知症のように発症メカニズムや治療法が解明されていない病気でも、統計から予防手段を見つけることが可能です。現在では生活習慣病全般をテーマに、研究が続けられています。


この研究は日本の生活習慣病の今後を予測し、国として予防策をとる上でも重要な資料です。例えば、2025年に認知症患者が700万人に達すると予測されていますが、その数値も久山町研究のデータから算出されたものです。


*特定の集団を対象に感染症や生活習慣病などの頻度や分布を調べ、その発生要因について統計学的に調査するもの。


久山町研究が注目されている理由

久山町の住民は、年齢・職業分布が全国平均とほぼ同じ。つまり、研究に最適な偏りのない日本人のサンプル集団なのです。長年を経ても、都市計画によって状況は維持されていますので、この町で起こっている現象は、日本で平均的に起こっていることだと考えられています。

その他、以下のような特徴も併せ持っており、精度の高い調査として認められています。


久山町研究の特徴表

久山町研究における認知症の研究成果を紹介

街のイメージイラスト

認知症の有病率と日常生活動作に関する調査は、1985年に65歳以上の住民を対象としてスタート。92%を超える高い受診率を維持しながら、その後1992年、1998年、2005年、2012年にも実施されました。この調査により、認知症に関して明らかになったことを紹介しましょう。


アルツハイマー型認知症の急増

1998年から2012年にかけての調査によると、認知症の有病率は年々増えていて、特にアルツハイマー型認知症は急激に増加していました。2040年頃に、国民の10人に1人が認知症患者になる可能性を導き出したのも、この調査結果によるものです。


60歳以上の高齢者は、2人に1人が認知症に

健常高齢者が生涯に認知症になる確率を試算した結果、55%になると言われています。つまり、高齢者夫婦のどちらか一方、結婚すると4人の両親のうち2人がいずれ認知症になることが予測されています。


糖尿病は認知症のリスク要因の1つ

アルツハイマー病を発症するリスクについて、糖尿病の人は通常の2.1倍、耐糖能異常(糖負荷試験で分かる食後の高血糖)の人は1.6倍が高いことがわかっています。さらに、脳血管性認知症についても、糖尿病の人は1.8倍発症リスクが高くなります。


50年で糖尿病が増加

50年間の推移を見ると、認知症のリスク要因の1つである糖尿病が増えています。糖代謝異常の有病率は、1961年には男性11.6%、女性4.8%でした。ところが2002年にはそれぞれ54.5%、35.5%と、男女とも大幅に増加しています。この数値は全国平均と比較すると高めですが、一般的な健診は受診率が低いこと、久山町の健診で行われている糖負荷試験が行われないことから、数値に差が出ていると考えられます。


高血圧は脳血管性認知症のリスクが高い

血圧が高いと脳卒中のリスクが高くなり、脳血管性認知症のリスクも増加するという調査結果が出ています。一方、多数を占めるアルツハイマー病と高血圧との関連性は認められていません。


アルツハイマー型認知症、脳血管型認知症のリスクを上げる喫煙

中年期から老年期にかけてたばこを吸った人は、吸わない人と比べてアルツハイマー病の発症リスクが2倍、脳血管性認知症の発症リスクが2.9倍であることがわかりました。しかし、今からでも遅くはありません。年をとってからでも禁煙をすれば、発症リスクが下がることもわかっています。


認知症の予防には運動

久山町研究とその後の海外の追跡調査により、運動を行うとアルツハイマー型認知症のリスクが45%減少することがわかっており、脳血管性認知症でも同様の結果が出ています。


認知症予防に有効な食事

大豆製品、野菜、海藻類、乳製品を多く摂り、米やパンなどの糖質が少ない食事は、認知症予防に有効であることがわかりました。さらに予防に有効な食事をしていた人の多くは、果物、イモ類、魚の摂取量が多く、お酒は控え目という傾向も確認されています。


参考文献

1)清原裕:わが国における認知症の実態と予防―久山町研究からのメッセージ.日本医療・病院管理学会誌,vol53,No.2,p51-64,2016.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsha/53/2/53_149/_pdf

(2018年7月5日アクセス)

2)九州大学医学部.“久山町研究”.九州大学.http://www.hisayama.med.kyushu-u.ac.jp/(2018年7月5日アクセス)


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