順天堂大学大学院医学研究科スポートロジーセンターの博士研究員 田端宏樹、田村好史 先任准教授、河盛隆造 特任教授、綿田裕孝 教授らの研究グループは都内在住の高齢者1607名を対象とした調査により、中学・高校生期と高齢期の両方の時期に運動習慣がある高齢者ではサルコペニア(*1)や筋機能低下のリスクが低いことを明らかにしました。超高齢社会に直面する我が国では、長期介護・寝たきりが社会問題化しており、要介護の主要なリスクであるサルコペニアの予防は重要な課題です。
順天堂大学大学院医学研究科スポートロジーセンターの博士研究員 田端宏樹、田村好史 先任准教授、河盛隆造 特任教授、綿田裕孝 教授らの研究グループは都内在住の高齢者1607名を対象とした調査により、中学・高校生期と高齢期の両方の時期に運動習慣がある高齢者ではサルコペニア(*1)や筋機能低下のリスクが低いことを明らかにしました。超高齢社会に直面する我が国では、長期介護・寝たきりが社会問題化しており、要介護の主要なリスクであるサルコペニアの予防は重要な課題です。
【本研究成果のポイント】
● 東京都文京区在住の高齢者1607名を対象とした調査を実施。
● 中学・高校生期と高齢期の両方の時期で運動習慣がある高齢者では骨格筋機能が高く、サルコペニアのリスクが低いことが明らかとなった。
● サルコペニアの予防には、中学・高校生期と高齢期の両方で運動を実施する重要性が示唆された。
【背景】
サルコペニアとは加齢や疾患により、骨格筋の筋量や筋力などの骨格筋機能が著しく低下し、身体機能に障害が生じた状態であり、日常生活動作の制限や転倒・骨折など要介護に繋がる様々な悪影響を引き起こします。
運動は骨格筋機能を維持・改善できるためサルコペニアの予防に有効ですが、生涯のいずれの時期の運動実施が高齢期の骨格筋機能の維持、すなわちサルコペニアの予防により有効であるかは十分に解明されていませんでした。骨格筋機能は20~25歳でピークを示し、50歳前後から徐々に低下していくことより、ピークを高める中学・高校生期と低下を抑える高齢期での運動実施がサルコペニアの予防により重要な運動実施時期である可能性があります。
そこで本研究では、都市部在住高齢者を対象とした観察型コホート研究“Bunkyo Health Study”(文京ヘルススタディー) (*2)において、中学・高校生期および高齢期の運動習慣とサルコペニアおよび骨格筋の筋量低下、筋パフォーマンス低下との関連について検討しました。
【内容】
図1:4つの運動グループとサルコペニアの有病率の関連
図2:4つのグループと運動グループとサルコペニアの診断要素の保有率との関連
中学・高校生期の運動習慣の有無と現在(高齢期)の運動習慣の有無とで4群に分け、サルコペニアの有病率、サルコペニアの診断要素の保有率および骨格筋機能指標を比較しました。
その結果、男性では中学・高校生期と高齢期のいずれもで運動習慣を有する人では両時期で運動習慣を有さない人に比べてサルコペニアの有病率が0.29倍、筋量低下の保有率が0.21倍、筋力・身体機能低下の保有率が0.52倍低く、女性ではサルコペニアの有病率に差はみられなかったものの、中学・高校生期と高齢期のいずれもで運動習慣を有する人では両時期で運動習慣を有さない人に比べて筋力・身体機能低下の保有率が0.53倍低いことが示されました。
【今後の展開】
本研究では、男性は中学・高校生期と高齢期の両方の時期に運動することにより、サルコペニアのリスクを低減できる可能性が明らかになりました。また、女性においても中学・高校生期と高齢期の両方の時期に運動することにより、高齢期の筋力・身体機能の低下リスクを低減できる可能性が示されました。
本研究の興味深い点は、高齢期の運動だけでなく、数十年前の中学・高校生期の運動が高齢期の骨格筋機能の維持に関連している可能性を示している点です。昨今、少子化や働き方改革などにより学校における部活動の在り方が変わり、中学・高校生期に運動に取り組む機会が減少してきています。実際にスポーツ庁の調査では2009年から2018年の間に中学生の運動部活動所属者が約13.1%減少したと報告されています。本研究の成果は、若い頃の運動の長期的な意義を示唆しており、若い頃に参加しやすい運動やスポーツの機会を増やしていくことが将来の健康長寿社会の創出につながると期待されます。
【用語解説】
*1 サルコペニア:
加齢や疾患により筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下している状態を指す。2016年に国際疾病分類に登録された。ヨーロッパやアジアのワーキンググループで診断基準の共通見解(EWGSOP2、AWGS2019)がある。
*2 Bunkyo Health Study (文京ヘルススタディー):
順天堂大学大学院医学研究科 スポートロジーセンターで2015年から取り組んでいてる、東京都文京区民1,629名の高齢者を対象として、認知機能・運動機能などが「いつから」「どのような人が」「なぜ」低下するのか?「どのように」早期の発見・予防が可能となるか?などを明らかにする研究。
■詳しくはこちらをご覧ください。(外部リンクへ遷移します)
https://www.juntendo.ac.jp/news/13517.html
楽しく、あたまの元気度チェック(認知機能チェック)をしましょう
あたまの元気度チェックへ身長や体重・運動習慣等を入力するだけで、将来の認知機能低下リスクをスコア化できます。
認知症や介護に関する最新のニュースやお役立ち情報を月2回程度お知らせします。