千葉大学大学院薬学研究院の研究グループは、脳内で一酸化窒素によって活性化される可溶性グアニル酸シクラーゼ(※1)が加齢に伴い増加することが、認知症の発症リスクを上昇させる一つの要因であることを明らかにしました。
千葉大学大学院薬学研究院の研究グループは、脳内で一酸化窒素によって活性化される可溶性グアニル酸シクラーゼ(※1)が加齢に伴い増加することが、認知症の発症リスクを上昇させる一つの要因であることを明らかにしました。
■研究成果
研究グループは、遺伝子の発現量を解析する手法のRNAシーケンス(※2)を用いて、ショウジョウバエ脳内で加齢に伴い発現量が変化する遺伝子を抽出しました。そこからさらに、データベースとの比較解析を駆使して、記憶低下の原因となる候補遺伝子を絞り込みます。そして、それぞれの候補遺伝子の発現量を脳内で改変したショウジョウバエを作製し、それらの記憶能力を測定しました。
その結果、一酸化窒素(NO)によって活性化される可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)の発現量が加齢に伴い増加したため、sGCの発現量を脳内で低下させることで記憶が上昇するとわかりました。
具体的には、一部の神経細胞でsGCの発現量を抑制またはsGCを妨害する薬剤を投与したショウジョウバエでは、加齢による記憶低下が改善しました。さらに、脳内の神経細胞の周囲にあるグリア細胞で、NOを合成する酵素であるNO合成酵素(NOS)の発現量を抑制、またはNOSを阻害する薬剤を投与したショウジョウバエでも、記憶低下の改善が見られました。この結果により、加齢に伴いNOやsGCに関連する経路が活性化することが、記憶の低下を引き起こす一つの原因となることが示唆されました。
■今後の展望
NOやsGCに関連する経路は、ヒトを含めた哺乳類でも同じように機能しているものです。今後は、NOやsGCに関連する経路が加齢に伴い活性化するメカニズムや記憶を低下させるメカニズムのさらなる解明が見込まれるでしょう。また、この研究でわかったことが、認知症に対する新薬開発や新たな生体内リスクマーカー(※3)の発見などに繋がることが期待されます。
※1 可溶性グアニル酸シクラーゼ
NO により活性化されると、グアノシン三リン酸(GTP)から環状グア ノシン一リン酸(cGMP)の生成を触媒する酵素。
※2 RNA シーケンス
遺伝子の塩基配列を高速に解読できる次世代シーケンスを用いて、取得した情報を データ解析することで、遺伝子の発現量を網羅的に解析できる手法。
※3 リスクマーカー
疾患の発症リスクと相関し、発症リスクを予測できる特定の物質や遺伝子。
■詳細は以下の外部リンクをご覧ください。
https://www.chiba-u.ac.jp/general/publicity/press/files/2022/20220902_1.pdf
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