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2022.05.25

【東京大学】高齢日本の20年後:認知症患者は減るが、格差拡大・フレイル合併で介護費増

世界的に進む人口の高齢化で、懸念されるのが認知症とフレイル(虚弱・※1)の増加です。これまで厚生労働省などが発表してきた将来推計では、2040年には認知症患者数が1000万人近くまで増えると予想されていました(※2)。しかしこれらの予想では、戦後世代の高齢者において、健康状態や学歴が向上していることや、高齢者の間で年齢・性・学歴による疾病罹患状況の個人差が拡大していることについては考慮されていませんでした。


※1 フレイル(虚弱)

高齢者に見られる心身が疲れやすく弱った状態のこと。体重減少、倦怠感、活動量の低下、握力の低下、歩行速度の低下などによって診断される。要介護状態への進行、健康状態の悪化、生命予後の悪化などのリスクであることが知られている。


※2 厚生労働省「認知症の人の将来推計について【参考】」

https://www.mhlw.go.jp/content/000524702.pdf



現在、世界各国では高齢者の健康・機能状態が個別多様化していることを考慮し、個人レベルでの状態変化を将来予測するミクロシミュレーションによる研究が進んでいます。このような背景のもと、東京大学大学院医学系研究科の研究グループは、60歳以上の認知症とフレイルの有病率と医療介護費について、2043年までの将来推計を明らかにしました。


研究グループは、年齢・性・学歴別に13の疾患・機能障害の有病状態を予測するモデルを開発。同大学生産技術研究所の支援により、超大容量計算機環境を利用し、4500万人以上の60歳高齢者の健康状態データをバーチャルで再現。そして半年ごとの有病状態の変化確率を計算し、2043年までの変化を追跡しました。また、国内高齢者パネル調査の認知機能測定データと、千葉県柏市で実施したフレイル調査の結果データをもとに、年齢・学歴・併存症別に認知症とフレイルの有病確率をあわせて推計するシステムを開発しました。


その結果、2016年では認知症患者数は510万人と推計され、国の予測とほぼ同じでしたが、2043年では国の予測とは異なり、465万人に減るという予測結果が得られました。これまで欧米の疫学調査や推計では、学歴や健康状態の改善により年齢別の有病率が減少することは明らかにされていましたが、長寿化の影響で「認知症患者数そのものは増加する」というのが世界的な通念となっていました。しかし、今回の将来予測では患者総数も減るという予想になっており、人口縮小に加えて日本の高齢者の健康状態や学歴の向上が、国際的に比較して際立っていることの影響などが考えられます。


ただし、認知症患者数の減少は大卒以上の男性では著しいものの、大卒未満の男性や、学歴に関わらず女性では増加することが予測されました。65歳以上平均余命に占める認知症のある余命の割合は、2016年から2043年にかけて大卒以上の男性では1%程度で変わりがないのに対し、高卒未満で22%から25%へ悪化するという推計。さらに女性では、大卒でも14%から15%に、高卒未満では23.8%から24.5%に悪化すると推計されました。また、男女格差・学歴格差が広がることに加え、格差の影響を受ける層ではフレイルを合併する割合が高いことも明らかになっており、濃密な介護ケアが必要になるため介護費総額は増加することが示唆されました。


■65歳以上平均余命(認知症、フレイルのない余命とある余命の推計)

2016年と2043年、学歴別推計値

解説:

A 男性全体では平均余命が2016年18.7歳から2043年19.9 歳に延伸し、認知症のある平均余命は2.2年から1.4年に短縮する。ただし学歴により平均余命の延伸に差があり、高校卒業未満の層では認知症のある平均余命が増えてしまう。

B 女性全体では平均余命が2016年23.7歳から2043年24.9歳に延伸し、認知症のある平均余命は4.7年から3.9年に短縮する。ただし学歴により平均余命の延伸に差があり、高校卒業未満の層では認知症のある平均余命が増えてしまう。

C 男性のフレイルのある平均余命

D 女性のフレイルのある平均余命


いずれも平均余命の延伸に伴い、フレイルのある平均余命も増える傾向があり、学歴による差は認知症ほど大きくない。


現在、日本の認知症対策は治療・予防など医学的な技術開発に重点を置いていますが、今回の研究結果は、これに加えて社会格差対策が必要であることを示唆しています。今回開発されたミクロシミュレーションでは、仮想的な政策影響を想定して、将来の政策シナリオを立てて思考実験することができます。さまざまな政策の期待効果について将来予測することで、科学的根拠に基づく政策立案を支援する基盤を提供できるのではないかと期待されています。


■詳細は以下の外部リンクをご覧ください。

https://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/PR/2022/release_20220427.pdf


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